みなさんこんにちは、しばです。
健康診断や人間ドック、定期的に受けていますか?
医療現場で行われる検査のほとんどは、医師や看護師によって直接行われるものが大半です。
しかし、中には患者さん自身に検査の過程を協力してもらう必要のあるものもあります。
その中の一つが、「便潜血検査」です。
この検査は、人間ドックやがん検診などでも行われている検査で、患者さん自身に検体を摂取ってきてもらう必要のある検査です。
便の取り方によっては検査の質が落ちてしまうため、検査の内容をしっかりと理解する必要があります。
検査の方法、注意点、結果の意味をまとめたので、参考にして下さい。
便潜血検査とは何か
便潜血検査の意味
便潜血検査は、名前の通り「便の中に含まれている血液の量を調べる」検査です。
便潜血検査は、臨床診療、人間ドック、がん検診と広く応用されています。
普段、便の中に血液が混じることはありません。
便の中に血液が入り込むということは、便を作る経路のどこかから出血をしているということにを示しています。
口から入った食べ物は、胃の中で分解され、小腸で必要な栄養分が吸収し、大腸に運ばれます。
大腸で水分を吸収した残りが、便となって体外に排出されます。
この過程の内、どこかで出血が起これば便の中に血液が入り込むことがありますが、検査方法の関係上、便潜血検査は下部消化管出血しか検出することが出来ません。
つまり、腸管(小腸、大腸)に出血があった場合は陽性となり判定することが出来ますが、胃やそのさらに上の食道といった場所に出血があったとしても検出することはできません。
便潜血検査で陽性と診断された場合には、下部消化管に何かしらの異常があるということです。
測定方法
検査薬の入った専用の採便容器で便を取り、便と混合した検査薬を専用の機械で測定します。
原理は、人のヘモグロビン(ヒトHBA0)に対するモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を用いて便中のヘモグロビンを検出します。
検査薬の中にはラテックス粒子もしくは金コロイド粒子というものが含まれていて、これが人のヘモグロビンに対して特異的に反応します。
化学法だった頃は食事の影響を受けることがあったため、無潜血食という食事を検査の2~3日前から続けて食べる必要がありましたが、免疫法になってからは食事の影響を受けないため不要になりました。
無潜血食とは、肉、魚を食べない、生野菜は食べない、野菜は煮て食べるというもの
便の取り方
便の採取には専用のキットを使いますが、現在使われているキットには何種類かあります。
今回は、当院で実際に使っているキットで説明します。
- 容器のキャップを回して引き抜きます
- 便の表面をまんべんなく擦り取ります(先端の溝に埋まるくらい)
- キャップと容器の向きを合わせて、まっすぐ強く押し込みます(バチンと音がするまで)
採取キットの中には、トイレの中に敷いて使うシートのようなものが入っています。
このシートを使うことで便を採取しやすくなります。
注意点
便潜血検査は、便中のヘモグロビンを免疫学的検査で検出する検査です。
現在行われている免疫法は、一昔前まで主流だった化学法に比べると精度も検出率も格段に良くなっています。
しかし、便の採取方法によっては検出感度が落ちてしまうので注意が必要です。
まず、便を採取する時は一か所からではなく、便全体からまんべんなくなぞるようにして採取するようにしましょう。
こうすることで、検出率を上げることが出来ます。
もし一か所からしか採取していないと、他の場所に異常があった場合には見逃されてしまうことになります。
次に、採取した便の保存方法です。
採取した便は、ビニール袋などに入れて冷蔵庫に入れておきましょう。
食品を入れる冷蔵庫にしまうのは抵抗があるかと思いますが、検査の関係上、冷蔵庫で保管しないと採取した検体が変性して検出率が落ちてしまいます。
専用容器で採取できる検体はほんの微量であり、蓋もしっかりと閉めておけば匂いが外に漏れることもないため、必ず冷蔵保存するようにしましょう。
どうしても嫌な場合は、使い捨ててもいいクーラーボックス(手提げ袋みたいなタイプ)に保冷剤と一緒に入れておくのもいいでしょう。
凍結してはいけません
冷暗所ではなく、冷蔵庫で保存すること
検体は採取した瞬間から劣化が始まるので、便はなるべく提出日の朝に取るようにしましょう。
今は便を二日間に分けて取る方法が主流ですので、その場合は検査前日・当日の二日間で採取するのが、検査の質を最も上げる取り方です。
便潜血検査は人のヘモグロビン(ヒトHBA0)に対するモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を用いて便中のヘモグロビンを検出する検査です(ちょっと難しいですね)。
ヘモグロビンは胃や膵液由来の消化液によって変性してしまったり蛋白分解などによって抗原決定基が変性してしまうと検出することが出来なくなってしまいます。
簡単に言うと、「鍵穴の形が変わってしまったため、今持っている鍵では家に入れなくなってしまった」ようなイメージです。
大量の出血時は例外ですが、通常は消化液の影響を受けない下部消化管出血を検出するものです。
また、女性の方は生理による出血が入り込んでしまう可能性があるので、生理中には取らないようにしましょう。
検査日と生理が重なってしまった場合は、その旨を診察の時に必ず伝えるようにしてください。
生理中には採便しない
注意点まとめ
- 便は一か所からではなく、まんべんなく擦り取る
- 採取後はなるべく早く提出する
- 提出まで時間がある場合は、関らず冷蔵庫で保管する
- 生理中は避ける
- 検出できるのは下部消化管出血のみ
結果の解釈
結果の判定にはカットオフ値というものを使います。
カットオフ値とは、その値以上だと疾患のある可能性が高い数字ということです。
ただし、疾患がなくてもその数字以上になることもあります。
疾患のある可能性がある人と、そうでない人を分けるギリギリの境界線みたいなものと考えてください。
この境界線はギリギリに設定してあるので、「本当は正常でも結果が異常だった」、「本当は異常でも結果が正常だった」ということが起こりえます。
また、結果が+とーで表記されている場合、尿検査の結果などに記載されている+やーと意味合いが違うことに注意してください。
尿検査などで使われている+、1+、2+は異常の程度を示していますが、カットオフ値での+、ーは、仮に+だった場合は程度の強さは関係なしに、下部消化管に何かしらの病気がある可能性が高いのです。
ーだった場合は、採取方法などの注意点を守っていれば、とりあえず下部消化管に異常がある可能性は低いと考えていいでしょう。
一つ注意したいのは、痔など外部からの出血がある場合にも陽性となってしまうことがあるということです。
検査値の見方
カットオフ値以上の場合:下部消化管に異常がある可能性が高い
カットオフ値以下の場合:特に異常が無い可能性が高い
臨床診療および人間ドックの場合
カットオフ値:50ng/mL
診療時に患者さんの年齢、性別、主訴、病態、家族歴などから総合的に判断されます。
必要があれば、下部内視鏡検査、上部内視鏡検査、CT検査など、より精密な検査へと進むことになります。
がん検診の場合
カットオフ値:150ng/mL
がん検診でカットオフ値を超えた場合は、2次精密検査、すなわち全大腸内視鏡検査へと進みます。
本日のまとめ
病気という物は厄介で、最初から症状が強烈にあるものもあれば、病気がかなり進行するまでほぼ無症状なものまであります。
体に異変が起こってからでは遅い場合もあるのです。
医療検査は、今回の便潜血検査のように患者さん自身に採取をお願いする検査もあります。
方法をしっかりと守ってもらわないと、質の高い検査を維持できなく、病気を見落としてしまう可能性もあります。
検査の意味と方法を、しっかりと理解して行うことが大切です。
自分では意外と気づくことのできない病気を早期発見してくれる健康診断は、定期的に受けるようにしましょう。