みなさんこんにちは、しばです。
みなさん、突然ですが「酵素」って聞いたことありますか?
サプリメントや美容商品など、日常生活の中に様々な形で応用されていますよね。
ではいったい、酵素はどのような働きで私たちの日常生活に関わっているのでしょうか?
酵素って必要なの?無くても困らないものなの?
今回は、その酵素についてご説明していきたいと思います。
ただし、内容が少し化学的になっていますので、化学苦手だな~って方には優しくないかもしれません(すみません)。
なるべく簡潔にまとめてありますので、なんとか最後まで読んでいただければ幸いです。
それでは、いってみましょう!
酵素とは
人間は、生命を維持するために体の中で実に様々で複雑な反応を行っています。
例えば、ご飯を食べると消化管内でグルコースにまで分解され、小腸から吸収されて体のいたるところでエネルギー源として作用します。
しかし、ご飯をビーカーの中に入れて放置しておいても、ご飯はそのままで変化することはありません(腐るという変化は起こるかも知れませんが)。
では、なぜ生体内でご飯は分解され、エネルギー源にまでなることができたのでしょうか?
ビーカーの中には存在しない何かが生体内にありそうですね!
ご飯の入った水に唾液を混ぜておくと、ご飯は分解されて麦芽糖という糖分になります。
唾液が入っていないただのご飯の入り水は、何時まで経ってもそのまま変化が見られません。
・ご飯の入った水+唾液 → 麦芽糖
・ご飯の入った水+唾液なし → 変化なし
これはもう、偉い人たちが解明してくれています!
この生体内に含まれているご飯を分解する物質の正体、それはα-アミラーゼというタンパク質だったんです!
α-アミラーゼは、1832年にA・パヤンとJ・F・ペルソ によって発見された最初の酵素です。
このα-アミラーゼというタンパク質のおかげで、ご飯の成分であるデンプンという物質が、容易に麦芽糖へと変化させられたわけなんですが、どうしてα-アミラーゼはそんなことができるのでしょうか。
物質を変化させるのは外部からのエネルギー供給が必要となります。
お湯を沸かすのも、火というエネルギーが必要ですよね。
物質が変化する時、変化させるためのエネルギー量(活性化エネルギー)というものが重要になってきます。
活性化エネルギー
・大きい → 安定している
・小さい → 変化しやすい(不安定)
先ほどのα-アミラーゼは、デンプンにくっつくことで活性化エネルギーを小さくし、少ないエネルギーで麦芽糖に変化しやすいように作用していました。
これこそが、酵素の持つ能力です!
(ゲームで例えると、敵の防御力を下げる、的な働きでしょうか?)
お湯を沸かすというで考えて見ましょう。
今、水からお湯を沸かそうとしているとします。沸騰させるには10分かかります。
あなたは急いでいるので、なんとか5分でお湯を沸かしたいのですが、それには外部からのエネルギーを強くする必要があります(つまり、火力を上げる)。
台所を見回すと、酵素が入った袋を見つけました。
その酵素をお湯の中に入れると、同じ火力のままでも5分で沸騰させることができます。
酵素によって水の活性化エネルギーが下がり、沸騰しやすくなったのです。
・水1リットル+火力10 → 10分で沸騰
・水1リットル+火力20 → 5分で沸騰
・水1リットル+火力10+酵素 → 5分で沸騰
ちなみに、特定の物質の活性化エネルギーを小さくして反応速度を速める物質の事を触媒と言います。
酵素とは(ここまでのまとめ)
・触媒としての作用を持つ
・特定の物質の活性化エネルギーを小さくし、変化させやすくする
酵素の特徴
特異性
特異性とは、特定の物質Aには酵素αしか反応しないという事を言います。
つまり、
・物質A+酵素α → 変化あり
・物質C+酵素α → 変化なし
・物質D+酵素α → 変化なし(以下、いくら物質を変えても酵素αは反応しない)
ではなぜ、酵素Bは物質Aにしか反応しないようになっているのでしょうか。
もし、酵素Bがどんな物質にでも反応してしまうと、生体内で無秩序に反応が進んでしまい、制御が効かなくなってしまいます。
そこで、特定の物質には特定の酵素が反応するという性質を持たせ、生体内の反応を管理しているのです。
・物質A+酵素α → 物質B
・物質B+酵素β → 物質C
・物質C+酵素γ → 物質D
このように、特定の物質に反応する基質が決まっていれば、生体内での反応は決まった方向へと変化することができます。
これが基質の特異性という性質です。
酵素の活性は、含まれている物質の量によって変化する
酵素の反応では、物質とそれに対応する酵素が結合して反応が起こることは説明しました。
この時、ある一定の酵素が含まれている溶液に特定の物質を加えていくと、加える物質の濃度に比例して反応速度は徐々に早くなっていきます。
しかし、物質の濃度がある一定以上に達すると、反応速度は一定となります(これ以上いくら物質を加えても変化しない)。
最初の、反応速度が徐々に早くなる反応を一次反応、これ以上速くならなくなったところを零時反応と言います。
温度・pHによって酵素の活性は変化する
化学反応は一般的に、温度が1℃変化すると、反応速度は10%変化すると言われています。
つまり、温度が10℃変われば反応速度は100%(2倍)変化するという事になります。
しかし酵素はタンパク質の一種なので、ある一定の温度を超えるとその活性を失い、反応速度は低下してしまいます。
タンパク質は、一定の温度以上でその性質が変化してしまい、元に戻ることはできないのです(不可逆的反応)。
ちょうど、卵を熱するとゆで卵になって、冷やしても元に戻れないのと同じです。
変温動物(体の温度が外部の温度によって左右される動物)は、冬になると冬眠します。これは、外気温が下がることによって体内の温度も下がってしまい、酵素活性が働きにくくなるためです。
手術でも、患者さんの体温を0℃付近まで低下させる術式がありますが、これは心臓における酵素の働きを抑制するためです。
pH(酸性、アルカリ性の度合い)も酵素の反応に変化を与えます。
タンパク質のもう一つの性質として、pHが変わるとタンパク質の持つ構造が変化します。
酵素もタンパク質の一種なので、この特徴を持っています。
酵素が物質と最もよく結合できる構造をもつpHを至適pHと言います。この時、酵素と特定の物質の結合できる効率が最大に達しています。
極端にpHが至適pHから離れると、酵素の構造がかなり変化してしまい、そもそも特定の物質にくっつくことができず、反応が起こらなくなっていしまいます。
酵素ごとに至適pHは異なるので、その酵素にあったpHに体内は保たれているのが通常です(例えば、胃の中で働く酵素の至適pHは低め、など)。
酵素の種類
酵素には、いったいどれくらいの種類があるのでしょうか。
「2万種類以上」というのを聞いたことがあります。すごい数ですね。
おそらく、これからもっと研究が進めば、新たな酵素がどんどん見つかってくるのではないでしょうか。
病院や健診で採血をした際、結果の欄に「AST」「ALT」「LD]「ALP」「γ-GT」「AMY」などといった記載を目にしたことはないでしょうか?
これらは全て酵素です。
体のどこにでも存在しているというわけではなく、酵素の種類によってある程度存在する場所が決まっています。
医療ではこの性質を利用しています。
調べた酵素の濃度が普段と違う濃度になっていれば、その酵素が存在する臓器に何かしらの異常が起こっている可能性が高いのです。
だから、病院に行くと採血をするんですね!
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回の内容は少し難しかったかもしれません。
日常生活の中できっても切れない関係の酵素。実にすごい存在ですね!
この酵素があるおかげで、私たちの生活が成り立っているといっても過言ではないでしょう。
どこかで採血をして結果を見た際に、「あ、これがあの酵素ね」と思い出してもらえたらうれしいです。
それでは、また!