みなさんこんにちは、しばです。
「血糖値」という言葉、聞いたことありますか?
血糖値とは、血液中に流れている糖分の量です。
血糖値が高くなると糖尿病の危険性が出てきたり、逆に血糖値が低いと意識障害を起こしたりします。
血糖値は、病院などの診療機関で採血をすることによって分かります。
病院に行き、診察を受け、採血をして、再び診察に戻り、結果を教えてもらう、という流れです。
総合病院だと、受付をしてから結果が分かるまでに大体1~2時間程度でしょうか。






目次
血糖自己測定(SMBG)とは
血糖自己測定とは、血糖値を病院などの医療機関ではなく自分で測ることを言います。
SMBGはSelf Monitoring of Blood Glucoseの略称で、日本語になおすと「血糖値を自分で測定し、監視すること」です。
専用の機械を使って血糖値を測ります。
機械は持ち運びができるように小さく作られており、使い方も分かりやすいようにシンプルになっています。
音声でガイドしてくれる機能がついているものもあります。
各メーカーから何種類もの測定機が販売されており、その機械ごとによって特徴も異なりますが、血糖値を簡易的に測れるという点では全て同じです。
なぜ、自分で血糖を測る必要があるのか
糖尿病などで、血糖値のコントロールができているか、治療効果が出ているかの指標となるのは主にHbA1c(モノグロビンエーワンシー)です。
HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均の血糖値を表しています。
しかし、HbA1cだけではどのような血糖変動があるのか分かりません。
SMBGのメリットは、血糖値の変動がすぐに分かる点です。
特に、低血糖を早期に発見できるのは大変重要です。
測定結果を参考に、食事や運動などの生活習慣の見直し、経口薬やインスリン量の調節が行われたりします。
また、低血糖発作やシックデイ(風邪など、普段と調子が違う日)などによる高血糖などの急性合併症への迅速な対応や、3大合併症や動脈硬化など慢性合併症の進展を予防するためにも有用です。
血糖値が良ければ、治療に対してもより前向きになり、QOL(生活の質)の維持につながります。


病院の結果より信頼性が劣る?



壊れているのかな?


SMBGは、個人で血糖値を測れるように、機械を小さく改良したものを使用して血糖値を測ります。そのため、測定結果がバラつくことがあります。
病院などで使用している機械はとても精密にできているので、大きさも値段も全くの別物です。
病院の機器とSMBGで共通するのは、定期的なメンテナンスと精度管理(値が正確に出ているかのチェック)が必要ということです。
もちろん、値が全くのデタラメというわけではなく、あくまで「病院の機器と比べたら劣る」ということです。
患者さんの中には「病院の結果と値が20も違う!壊れているんじゃないか!?」と言われる方もいらっしゃいますが、それは仕方のないことなのです。
あくまでも「簡易」血糖測定器ということを忘れてはいけません。
実際、どのくらいの差があるのか
では、病院で使われている機械とSMBGでは、いったいどれくらいの差があるのでしょうか。
いくら簡易血糖測定器といえど、性能がデタラメなものが出回っているわけではありません。
医療機器として使われている以上、厳密な基準があり、それをクリアしないと製品として販売できないことになっています。
簡易血糖測定機の精度は「ISO 15197」で定められています。
ISOとは国際基準の事であり、世界共通となっています。
この基準の中では、
・精確性の評価
・ヘマトクリットの影響評価
・干渉物質の影響に対する評価
の3項目が定められています。
簡易血糖測定機を使用している人が、最も気になる項目は「精確性の評価」だと思います。
では、簡易血糖毒定期の精確性はどうなのでしょうか。
精確性に関しては、
検体を測定し、測定値の95%が以下の範囲に入らなければならない。
・100mg/dL未満で±15mg/dL以内
・100mg/dL以上で±15%以内
となっています。
つまり、真の血糖値が80mg/dLだった場合、簡易血糖測定機で測定した値は65~95mg/dLまでのバラつきは許されるということになります(±15mg/dL以内)。
さらに、血糖値が高い場合、例えば真の血糖値が300mg/dLだった場合は、簡易血糖測定機で測定した値は255~345mg/dLまでバラついても、機械の特性として許されてしまうのです(±15%以内)。


「え、全然使えないじゃん」と思いましたか?
ちょっと待ってください!
これはあくまで、ISOで定められている基準であり、製品化するにあたって最低クリアしなければいけない性能の話です。
実際に、世の中に出回っている簡易血糖測定機は、各メーカーが改良に改良を重ねた優秀な製品です。
実際に、ここまで大きなバラつきを見たことはありません。
それどころか、検査室で測っている値とほとんど遜色ない値を返してくれる測定機が大半です。
ただ、あくまでも簡易血糖測定機。
これだけのバラつきは許容範囲内ですよ、ということを記憶の片隅にでも留めておいてもらえればと思います。
SMBG(簡易血糖測定機)の有用性
検査室では分からない事が分かる
簡易血糖側的の一番の有用性はやはり、検査室の検査では分からないことが分かる、です。
どういうことかというと、病院に行って血糖値を測るとします。
結果は80mg/dLでした。
基準範囲内でした。
以上で終わりです。
しかし、簡易血糖測定機は、自宅に帰ってからも血糖値を測ることができます。
これによって、一日の中で、血糖値が上がりやすい行動や、下がりやすい行動を発見することができます。
例えば、「朝方は血糖値が高めかも知れない」「ケーキより、蕎麦を食べた時の方が血糖値が上がりにくい」など、様々な発見ができます。
また、血糖値を適度に測ることで、きめ細かい血糖値のコントロールができるようになります。
合併症の予防や進展の防止、病気に対する理解が深まり治療へ積極的になれるなど、様々なメリットがあります。
自宅で測定した結果を主治医が確認することで、さらに適切な治療を受けることが期待できます。


しかし、良いことばかりでもない
どんなことにも、メリットにはデメリットもセットで付いてくるものです。
簡易血糖測定機もその例に漏れず、デメリットがあります。
それは、
・血を出す時の痛み
・備品の管理
・経済的負担
などです。
血糖値を測る以上、血を採らなくてはいけません。
これはどうしても避けられないことで、仕方のないことなのですが、やはり針を刺すということに抵抗を感じる人は少なくありません。
ましてや、一日に数回もとなると、指先に痛みが出てきてしまう方もいます。
備品の管理も重要です。
簡易血糖測定機の本体はもちろん、血を採る穿刺針や測定に使う試験紙、指を消毒するアルコール綿など、多くの備品を管理しなければなりません。
各備品には使用期限が設けられていますので、期限切れにならないよう、注意しなければなりません。
経済的負担も発生します。
もちろん簡易血糖測定機は無料ではないので、使用料と、その他備品の購入費がかかってきます。
保険の中に組み込まれているので、驚くような金額を請求されることはありませんので安心して下さい。
ただ、保険の効かない自費で購入するとなると、それなりにいいお値段ですので注意して下さい。


使用する際の注意点


簡易血糖測定機を使用する際に、いくつか注意点があります。
簡易血糖測定機は機械ですので、動くのに適切な環境が必要になります。
つまり、極端に暑いところや寒いところでは使用することができません。
適正温度は機器によって違うので、使用する前に必ず確認しておきましょう。
他にも、説明書に使用上の注意が記載されているはずですので、必ず確認しておきましょう。
いざという時に、使えないでは困ってしまいます。
使用する備品にも、注意が必要です。
期限はもちろんですが、試験紙は湿度にも弱いので、使った後は必ず蓋をしっかりと閉めるようにしましょう。
試験紙には、個包装のものやテープ式のものなどがありますので、自分の使っているのがどんなタイプなのか、注意点は確認しておいてください。
最も注意しなければならないのは、測定する時です。
いくら機械の精度が高くても、測定手技が不十分だと、誤った結果を出してしまうことがあります。
まずは、測定前に手洗いです。
ミカンやリンゴなど果物の果汁が影響する場合があり、アルコール綿で拭くだけでは不十分という報告もあります。
だから、手洗いはとても重要!
アルコール消毒後は充分に乾燥させないと、異常値の原因となります。
機械ですので衝撃を与えたり、内部の埃や血液汚染、水濡れに注意も必要です。
充分な血液量がなければ測れない機種もありますが、少量でも測定してしまうものもあり、機種ごとに必要量も確認する必要があります。

まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、簡易血糖測定機(SMBG)について説明させてもらいました。
正しく使えば、糖尿病の治療に大変有効な機械です。
ただし、使い方一つで精確性に欠けるデータになってしまうので、使用上の注意をよく読み、正しい方法で血糖値を測るようにしましょう。
今回は少し専門的な話でした。
ご質問などあれば、遠慮なくコメントして下さい。
可能な限りお答えしたいと思います。
それでは、また!